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「ごめんなさい。本当に――」
「蓮、何やってんのぉ?」
突然、
奥のドアから出てきたサオリさんが、
あたしの言葉を遮った。
「んー、いま山ちゃんを口説き中なの。
邪魔しないでくれたまえ」
「邪魔なんてしないわよ。
でも、戻らなくていいのぉ?
蓮のお客もうすぐシャンプー終わるんじゃない?」
「サオリちゃん。
ちょっとトリートメントでも勧めといてよ」
「知らなぁい」
「そんなこと言わずにさー」
じゃれあいとも見える二人の口論が始まった。
もはや、あたしに介入の余地はない。
よし。放っておこう。
と、
入力を再開しようとしたとき、
「いいじゃない、ご飯くらい。
一緒に行ってあげたらぁ?」
と、
サオリさんがこっちを向いた。
あたしの存在は忘れられているものとばかり思っていたけれど、
こんなときはあたしの姿が見えるらしい。
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