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キスの理由(二)
***
「じゃあね、理子ちゃん。
またメールする」
「あ、はい。
あ……。
今日はありがとうございました」
午後17時40分。
アパート前まで送り届けてくれた相沢さんにお礼を言って、
車が見えなくなるまで道路に立っていた。
最初で最後になる筈だったデートは、
映画を見て、
遅いめのランチを食べて、
少しドライブをして、
そして終わってしまった。
なぜ別れを切り出せなかったのかと今さら後悔しても遅いけれど、
勇気がない自分に嫌気がさした。
ううん。
あたしは勇気を無くしてしまったのだ。
昨日、決心した勢いのままであったなら、
あたしは別れを告げていた筈だった。
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