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下から見上げた志伸さんは刺激的過ぎて
まともに目を合わせられないくらい。
暗くて良かった。
「……痛い」
呟いてみて、直ぐ。
あたしの予想とは大きく違う方へ展開する物語に
興奮が焦りに変わる。
「華、もう、ココには来るな。
………送っていく」
表情が全く見えない。
暗い所為じゃない、怒りの所為だ。
聞こえるのは長い溜め息の音。
空気中に溶け込んだのは、諦め。
逸る心臓
焦る身体
玄関にたどり着いたのかチャラリ、と金属の摩れる音が聞こえた。
「華、早くしろよ」
本当にあたしを送り帰すつもりだ。
こんな時間に帰されてどうしろっていうの?
このままココに居座って、もっと逆鱗に触れるか
それとも、大人しく帰るか。
それとも、志伸さんを試すような事をしてみるか。
一つ、深呼吸をして自分の荷物を持った。
上手くいかなかったら、それは、それ。
きゅ、と唇を結んで志伸さんの待つ玄関へと歩いた。
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