第2章

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「これ、今度の模試の」 「ありがと、ワザワザ持ってきてくれなくても良かったのに」 「直接、渡したかったんだ」 青木君は普通、高校生の男子が恥ずかしくて言えないようなセリフを そんな素振りチラリとも見せずに サラッと言ってのける。 「青木君、日本人?」 「なんで?」 紅茶を優雅に飲む姿は、本当に落ち着いていて 制服を着てなければ絶対、年相応には見えない。 「言う事とか、やる事とか 異国の人みたいだよ」 「そうかな?あぁ、まぁ、向こうに住んでた事もあったからかな?」 「そうなんだ」 「後は、父親の影響かな」 「そう」 そう言えば こないだマンションで縛られた時も お父さんは海外だって、言ってたっけ。 「お父さん、忙しいんだね」 「さぁ、どうだろう」 意味深、とも取れる微笑み。 目を細めたその顔は可愛いのと、妖しいのと。 こんな時なのに 彼の性癖を思い出して、慌てて瞳を逸らした。 「良かったよ、咲良が元気になって」 「そう?ありがと」 「ソロソロ咲良にお願いしたかったんだ」 静かに静かに紡ぐ内容は 彼の穏やかな雰囲気とは全く異質な、どちらかと言うと正反対のモノだと予想がついた。
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