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沈黙が続くのは別に嫌じゃない。
この間じゅう
お互いの視線はブレルことなく
相手に注がれていて
なんていうか、意志の確認中?
みたいな。
「もうすぐ父が帰国するんだ、一度会ってみて?」
「あたし?」
「うん、咲良以外に誰がいるの」
「さあ」
「父は物書きなんだ」
「へぇ」
「きっと楽しい話が出来ると思うよ」
別に興味はなかった。
青木君のお父さんがどんな人かなんて。
右手を取られて
それがジワジワと上の方へ上がってくる。
二の腕を掴まれて
彼が、身体を寄せた。
「好きだよ」
まるで自分に暗示をかけているみたいに
あたしにではなく、青木君自身にそう告げているみたい。
唇が重なるその瞬間まで瞼を落とさずに
落ち着いた彼の瞳を見続けた。
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