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「ああああああああああああっ!」
叫びながら勢いよく身体を起こす少年。
良質な素材が使われているであろう寝具は寝汗を吸い、寝間着もぐっしょりと濡れていた。
悪夢から目が覚め、ゆっくりと覚醒へ向かう意識とともに息を整えると、窓の外のよく晴れた朝の景色が目に入った。
(あぁ、そっか…散らかしたまま寝たんだった…なんだか気分が悪いな…)
部屋の中を見回す。
石造りの部屋には本が隙間無く納められた大きな本棚に、大量の羊皮紙にインクに羽ペンがそのままに散らかっている木製の机。
様々な魔法具が無造作に詰め込まれた棚の隣には学院の制服と自分の好みの色のフード付きのローブが掛けられ、その脇にある姿見鏡に寝起きでスッキリしていない間抜けな自分の姿が映った。
寝癖はついているだろうが、もともと癖っ毛気味の金髪に大きな青い瞳。
まだ成長途中である身体は細く、それにともなって身長も低いが、幼い頃はその整った顔立ちから令嬢と間違えられる事も多く、気付かれてからも将来の成長ぶりが楽しみだと言われたものだ。
少年はベッドから降りると、窓を押し開いて外の空気を部屋に取り込む。
少し冷えた新鮮な空気に若干の肌寒さを感じながら夢見の悪さを晴らすと、自室と廊下を隔てる扉の側にある浴室へ。
軽く湯を浴び、完全に頭と身体を覚醒させると浴室から出て身支度を始めた。
白いシャツの上に全体的に暗いグレーを貴重とした制服に身を包み、青にチェック模様の入ったネクタイを締める。
そして胸ポケットに金糸でベリサリウスと刺繍された自前のローブに袖を通すと、姿見で確認。
鏡に映っていた窓を閉め忘れていたことを思い出して閉めると、小さく息を漏らした。
「しっかりしろ、自分…今日で全てが決まるんだ」
そう呟いて気合いを入れ直すと、教科書を纏めて部屋を出た。
無人となった部屋、羊皮紙の最後に書かれている名。
レイナス・フォン=ベリサリウス。
それが少年の名。
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