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レイナスは部屋を出て一階にある食堂へ。
そこで軽く朝食を摂った後、寮から学院へ向かった。
まだ朝も早く、食堂はおろか学院へ続く道にも他の生徒の姿は認められないが、レイナスはいつもこの時間帯に部屋を出ていた。
というのも、前以て教室で本日の授業の予習を行うのが彼の習慣であるし、また勤勉な彼は毎晩遅くまで授業の復習をして夜も更けた頃に眠り、朝早く起きて学院へ登校するという生活を送っているのである。
一日の睡眠時間はおよそ三時間から四時間程ではあるが、もともとさほど睡眠を必要としない体質なのか、彼は特に体調を崩すこともなく授業で眠りこけることもなかった。
その甲斐もあってか座学の成績では常に学年でもトップクラスを取れているが…如何せん睡眠時間が短いせいなのか、成長期にも関わらず身長が伸び悩んでいるのが彼の悩みの一つであった。
鳥が囀り、気持ちのいい春風が身体を撫でる中、レイナスは歩きながら手にしていたとある魔法に関する専門書を開いていた。
内容は『召還魔法の儀についての考察と実践』。
しかし、昨日もそうだが読めば読むほど、勉強すれば勉強するほど不安になっていく。
専門書に目を通すのを止め、本を閉じてその場に立ち尽くして溜め息をついた。
「おう、レイン!いっつもお早い登校だなっ!」
「うわっ!?って、なんだケイトか…そっちこそ随分早いね」
いきなり背中をバシッと叩かれ、つんのめるレイナス。
振り返ると手ぶらでレイナスと同じ制服と茶色のローブに身を包んだ男子生徒が笑顔で立っていた。
「まぁなー、ほら今日はあれの日だろ?いつもなら夜は遊んでっから遅刻ばっかだけどよ、今日ばかりはさすがに定時に登校しようと思ったんだけど…楽しみ過ぎて寝れなかったんだよな!で、そのまま寝ないで来たらお前が歩いてんのが見えたからよ、びっくりさせてやろうかなと」
にひひと人懐こい笑みを浮かべる彼に、レイナスは呆れて再度溜め息をつく。
彼の名はケイト・ネルフ=ヴォルスター。
逆立てた燃えるような短い赤毛はそのまま彼の活発さを示しており、同色の瞳は力強く、その顔立ちは精悍だ。
レイナスを見下ろしながら笑う彼の身長は、およそレイナスと比べても20センチ以上は高く、制服の上からでもわかるほど立派な体格をしている。
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