没落の名門《異界》運命の戦友

9/41
前へ
/373ページ
次へ
召還の儀は何事もなく進み、名を呼ばれた生徒達は次々と使い魔達と剣獣契約を成功させていく。 召還されたモノは燃える翼を持つ鳥だったり、水を操る小さな妖精だったりし、数少ないものでは風を纏った剣や帯電している斧等の形をした使い魔を召還した生徒もいた。 また、生徒の中でより優秀な者はウィンドドラゴンの幼体を召還し、生徒はおろかミラ教官をも驚かせた。 周りの生徒達が契約を終えていくなかで、それを見つめるレイナスのプレッシャーと緊張は増えていく一方であった。 元々この学院は世界でも有数のエリート校であり、通う生徒達も有力貴族の子息や、生まれは平民だが神童と呼ばれて育った魔法的素質の豊かな者が多く、卒業後も魔法研究者や戦場において功績を残す者も少なくなかった。 レイナスは名門貴族であるベリサリウス家の長男として、この学院に通い続けて四年目となるが…未だにその芽は出ていない。 確かにベリサリウス家は国内でも屈指の名門として名を馳せ、戦場において武官、騎士として多大なる功績を残してきたがそれも数世代過去の話。 ここのところ数世代、レイナスの祖父にあたる人物が当主となって以降は大した功績を残す事が出来ず、その勢力は衰退の一途を辿っている。 一応最低限の税を国に納めているとはいえ、その額も他の貴族と比べて低く、今は恩情のある国王の情けによってその家を存続出来ているような状態である。 更に、現在のベリサリウス家は明確な当主がおらず、二年前に病死してしまった先代当主…レイナスの父親に代わり母親が家督を執ってはいるのだが、もともと身体の弱い母がそれを続けるのも既に限界となっており、もはや家が無くなる一歩手前まできてしまっている。 本来であれば長男である自分こそがしっかりしなければならないのだが、如何せん家の事を教授される前に先代が死に、自分の魔法適正も未だによくわかっていないため、何とかしようと死に物狂いで机にかじりついているのだが…。 (魔力の質そのものは悪くないんだけどなぁ…) 魔法属性の優劣が不明で得意魔法も無しのため、血統として継がれた上質な魔力をもて余している状態。 座学は努力の甲斐があって優秀な成績を保てているが、魔法教育においては座学の成績より戦闘学の成績が重視されることが多く、貧弱にもほどがあるレイナスは他の貴族出身の生徒達から煙たがられ、差別されてしまっている。
/373ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3023人が本棚に入れています
本棚に追加