3023人が本棚に入れています
本棚に追加
貴族の連中で差別せずに話し掛けてくるのは、立ったまま船を漕いでいるケイトくらいで、そのためにレイナスは友人と呼べる存在が少ないのだ。
そのため、レイナスは強い使い魔を求めていた。
戦闘が不得意な自分に代わり、相手を次々と打ち倒していく…そんな使い魔を。
生徒の一人がウィンドドラゴンの幼体を召還した時は驚いた。
しかし、確かにその生徒は座学と戦闘学においても優秀であるが、レイナスを差別する迫害し嫌悪する人物でもあったため嫉妬深くなってしまうので考えるのをやめる。
しかし、今の自分ではそこまでの高望みは出来ないだろうと半ば諦めているレイナス。
得意な属性もわかっていない以上召還出来る剣獣の属性も不明であるし、自分に出来るのは自分の持つ質だけは良い魔力を想定通りに、存分に魔方陣に注ぎ込むだけだろう。
(最低限、バカにされないような使い魔と契約出来ればいいかな)
そう思い始めたレイナスの目に、人語を解する高い知能を有した黒猫の使い魔…通称ケット・シーと呼ばれる猫の妖精と剣獣契約を結んだ女生徒が映る。
ケット・シーは中級下位程度の使い魔である。
「今年は優秀な生徒達が豊作だな、学院長もお喜びになるだろう。では、次の者だ。ケイト・ネルフ=ヴォルスター!」
さて、名を呼ばれてようやく目を覚ました赤髪の友人の出番だ。
大きく欠伸をかくと、レイナスの肩を軽く叩いて前に歩いていく。
「んじゃ、行ってくるわな」
身長が高く、見た目も派手なケイトは意識せずとも道を開けるように生徒達が脇に避けていくなか、歩みを進めて魔方陣にまでたどり着く。
「さて、ヴォルスター。お前の召還となるが…先に頼んでおく、面倒だけは起こしてくれるなよ」
「へいへい、わかってますよセドリック教官。俺も下手して怪我して夜遊び出来なくなるの嫌なんでね」
眉間に皺、怪訝な顔をして溜め息を吐くミラにへらへらした笑顔でそういうと、ケイトは魔方陣の中心点に足を踏み入れた。
最初のコメントを投稿しよう!