没落の名門《異界》運命の戦友

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「さて」 そう呟き、ケイトはローブの胸ポケットからシンプルな金色の指環を取り出して右手第二指に嵌めると、そのまま右手を足元の巨大な魔方陣に翳して集中する。 …左手はズボンのポケットに突っ込んだままだが。 そうしてゆっくりと魔力を高めていくケイトの右手で、魔法発動体である金色の指環が輝いていく。 更に高まった魔力に反応して魔方陣全体が強い光を放ち、魔方陣…いや中心にいるケイトを中心にこれまでの生徒にはなかった強い風が吹き荒ぶ。 強い光と風にミラが驚きの表情を浮かべ、生徒達は身を守るように身体を縮こませるなかで、レイナスは集中する親友の姿を見つめていた。 そしてケイトは、自身の魔力が極限まで高まったところで声高らかに召還の詠唱文を叫んだ。 「『我望むは星の盟友、願うは運命の戦友。開き結ぶは世界の扉。我がケイト・ネルフ=ヴォルスターの名の下、是に応える者よ此処に…来やがれ!!』」 「っおい、ヴォルスター!お前詠唱文を勝手に!…くっ!?」 まさかの召還詠唱文に自己流アレンジを加えるケイトに対し、ミラは光の奔流と風が吹き荒ぶ中で怒鳴るが、突如更に輝きを増した魔方陣の眩しさに顔を背けた。 レイナスは勿論、他の生徒達も顔を伏せる。 そうして徐々に光と風が収まっていき、完全に収まって講堂内を静寂が支配した時、感じた覚えがない気配を感じてようやく彼等は顔を上げてケイトの立つ魔方陣を見る。 魔方陣に静かに立つケイト、その目前にはおよそ2メートルはあろうかという巨大な鷲が翼を畳んでケイトを見つめていた。 しかし、その大鷲はまるで生物とは思えなかった。 その身体は冷たい岩石の質感を持ち、嘴と鉤爪はよく磨ぎ上げられた刀剣のように鋭い。 そしてケイトを見つめ返しているその両目は血液のように赤く、見る者に恐怖と畏怖の念を否が応にも植え付ける。 徐々にザワつきだす生徒が気に障ったのか、石の大鷲は突然その石の翼を広げて宙へ飛び立つ。 翼を広げたその予想以上の大きさに生徒達から悲鳴が上がるが、その飛び立つ姿は精巧な彫刻のような美しさを持ち、まるで命の持たない固い岩石が、名工の手によって命を吹き込まれたような…美術品と生命体としての美しさを合わせ持っており、レイナスはその姿に目を奪われていた。
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