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(あれは…まさか)
急に飛び立った大鷲に思い出したようにミラは杖を向けるが、大鷲はその場でホバリングを続けるだけで生徒達を襲う気配はなく、自身を見上げるケイトを見下ろしていた。
「おぉー…、なんか我ながらすんげぇの召還したもんだなぁ。お前、名前なんてーんだ?」
自身が召還した岩石の大鷲に恐れる事なく問い掛けるケイトに、大鷲は直接頭の中には入ってくるような声で以て返答する。
『私を恐れないとは大した若者だな、大抵の者は飛び立った私を見るとその場にへたり込むか、逃げ出すかだというのに…貴様はそのどちらでもないようだ』
長年の時を経て、知識と経験を積んだ賢者のような威厳のある声。
ケイトはそれに満足したように笑顔で頷くと、再度話し掛けていく。
「いやいや、さすがにビビってるぜ?お前みたいにデカイ鷲はなんて見たことないし、そのうえ身体は岩石みてぇに固そうだしよ。多分殴り合いになったら一方的にボコられるんじゃねえかってな!…まさかとは思うけど、お前ガーゴイルってやつか?」
『いかにも。私の名はジン。誇り高きガーゴイルの大鷲だ』
(…やはり!)
それを聞いてミラは確信を得、周囲の生徒は目を剥いて驚愕する。
ガーゴイル。
全身堅牢な岩石の身体を持ち、高度な魔法を操る者。
その姿は鷲や悪魔のようだったり、蛇や牡鹿だったりする。
というのも、ガーゴイルの発生起源は石像や彫刻に宿った魔力が長い時間を掛けて濃縮されて意思を持つに至り、生命が宿って動き出した者。
つまり純正の生命体ではなく、そのあり方は魔力生命体である精霊に近い存在であり、精霊に近い事から高位の存在であると言われている。
また、ガーゴイルはその姿である彫刻が緻密かつ美しいほど内包している魔力が濃密であるため、美しい姿のガーゴイルはそれだけで強力な使い魔であるとされる。
今回のジンと名乗るガーゴイルは大鷲の姿をしており、その姿の壮大さから腕の良い名工が手掛けた物であると推察されるため、おそらくガーゴイルの中でもより高位の者であるだろう。
『さて、この場と貴様が立っている魔方陣を見るところ召還の儀であろう。となれば、貴様と契約を結ぶ事になるだろうが…一つ問い掛けをさせてもらおうか』
「問い掛け?あー、まぁ難しい魔法論理学の問題だとか、魔法薬学の魔法薬調合法だとかじゃなければ嬉しいんだけど…何だ?」
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