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「あぁ…疲れた」
彼がそう呟いた瞬間、講堂内には多くの歓声と拍手が湧いた。
その後、前代未聞の現役の学生でガーゴイルと契約を結んだ者として、彼は卒業後も語り継がれる事になる。
魔方陣から出て、聞こえる歓声や叫ばれる自身の名に小さく手を振りながらもといた場所に戻ろうとするケイト。
そんな彼を、呼び止める声が一つ。
「待て、ヴォルスター」
「何でしょうか、ミラ教官」
振り返ると、腕を組んだミラが複雑な面持ちで立っている。
「命の危険があったにも関わらず、教官の言葉を無視したものとして、本日の授業が終わり次第、反省文五枚の提出を命ずる。…だがまぁ、よくやったな」
「怒ってんだか、褒めてんだか…疲れんだから反省文は勘弁してほしいっすけどね」
最終的に笑顔で送り出すミラに軽口で返すケイト。
問題児と教官のやり取りはいつもこんな様子だ。
「あぁ、そうだヴォルスター。次はお前の友人の順だ。声をかけてやるといい」
「うっす」
ケイトは遠くに見える小さな友人に、エールを送るべく歩き出した。
歓声とともに押し寄せる人の波を掻き分けながら、ようやくレイナスのもとへ辿り着いたケイトはいつものへらへら顔で笑いかけた。
「たでーまー、レイン。心配かけちまったみたいで悪かったな」
「ホントにね…まさかガーゴイル呼び出すなんて思いもしなかったよ。何あの大きさ、小型の成体のドラゴンぐらいあったんじゃないの?というか、普段ブラブラしてんのに何凄いの呼び出してるんだよコノヤロー」
無事に契約を完了し、無傷で帰還した親友にレイナスは辛口を混ぜながら激励する。
「まぁ、腐っても貴族だしなぁ…正直死んだかと思ったわ!ったく、あいつらもいつもは俺の事避けるくせにこんな時だけワーキャーいいやがってよー。あぁ、次お前の順だってよ。おら、行ってこい!」
「あぶっ!」
朝に通学路で会った時と同程度の力で背を叩かれ、前に送り出されるレイナス。
振り向くと、サムズアップして良い笑顔で笑いかけるケイト。
「いいか!得意な属性がわかってねぇとか言ってたけど、気にすんな!とにかく全力だ!全力で魔力込めろ!お前、魔力質はいいんだから気負わずに行ってこい!」
「…うん!ありがとう、行ってくるよ!」
勇気付けられたレイナスは魔方陣へ向かう。
さて、彼の運命が決まる時がきたーーー。
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