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「『我が声に応え、響け開錠の音。開け星海の城門。我が求めるは高き者、望むは清廉なる魂、願うは理解者。我がレイナス・フォン=ベリサリウスの名において、我が意に応える者よ此処に来たれーーー』」
凄まじい勢いで魔方陣に流れ込んでいく四本の魔力の竜巻に囲まれながら、レイナスは静かに詠唱を紡いでいく。
しかし、その詠唱文は今回は召還の儀を行ってきた生徒達のものとは異なっており、側にいたミラだけがその事実に気づく。
(あの詠唱文は確か…高度な存在を限定して呼び出す上位の召還魔法のものか…しかし、その魔法と魔方陣は対応していないのだが、なるほど、そのための魔力ということか)
日々遅くまで机と教科書に齧り付いていたレイナスは、当然のように様々な魔法の文献を読み漁っており、その中で偶然この上位の召還魔法を知った。
しかし召還の儀で使用される魔方陣とは対応していないため、そのまま詠唱しても効果が発動することは不可能であったが、レイナスは強い使い魔を呼び出すために、どうにかこの召還魔法を使えないか…その方法を模索し続けていた。
ただでさえ魔法に関しては落ちこぼれな自分は、普通に召還の儀に臨んだところで無事に召還すら出来ない可能性もあったためである。
何日も考え続け、シミュレーションした結果に思いついたのが現在の力業である。
元々質の良い魔力を更に限界まで高めた上で、魔方陣に全力で叩き込み、半ば強制的に魔法の効果を得ようとする試みであるが…その成功率は低いのは変わりはなく、レイナスにとって人生最大の賭けであると言えた。
授業の後、こっぴどく叱られてもいい。最悪…今後魔法がこれまで以上に使えなくなっても、家が再興に向かうような存在を召還することが出来ればそれでもいい。
彼が望むのは強く美しく、清廉な心を持った存在。
祈るように詠唱を続けるレイナスを見つめるミラは、その姿からレイナスの思いを読み取っていた。
そして、そこまでして家の再興を目指すレイナスへ様々な感情が混じりあった笑みを浮かべた。
(全く…反省文は勘弁してやるぞ、レイン)
その笑みの先で、レイナスの魔法詠唱は完成に近づいていた。
「『ーーー我が声を聞く者よ。盟友となれ戦友となれ星海の民よ、今此処にその契りを結ばん!』」
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