没落の名門《異界》運命の戦友

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「…えっ?」 眩い光のせいで目を背けたその場の全員が、ハッキリとその戸惑いの声を耳にして顔を上げる。 いつの間にか魔力の竜巻は消滅しており、講堂内には召還後特有の粛々とした雰囲気が漂っていた。 「今の…レインの声か?」 そう呟いて祭壇上のレイナス目を向けるケイトに釣られるように、周りの生徒達もレイナスの背を視界に入れる。 しかし、何やら様子がおかしい。 まず使い魔の姿が見えず、またその使い魔特有の気配を感じない。 そして肝心のレイナスは、祭壇下からは足下を見て何やら呆然と立ち尽くしているように見え、それは魔方陣の外で召還を見守っていたミラも同じ状態だった。 まさかの召還失敗か? いや、あれだけの魔力だったんだぞ?召還に失敗するなんてさすがに有り得ないだろ 自分の思い通りの使い魔が出なかったんじゃない? それはあるかもなぁ、なんだ結局見せ掛けだけかよ、焦って損したぜ。 徐々に生徒達が思い思いのレイナスへの侮辱を含んだ感想を述べ、いつもの調子を取り戻していくなかで、ケイトはレイナスの様子がおかしい事に気がついた。 あいつはなんで震えてる?なんで冷や汗をかいてる?どうしてあんなにも…青ざめてるんだ? (なんだよ、どうしたんだよレイン!) そう思うと身体が勝手に目前の生徒を押し退け、祭壇へ駆けようとする…が。 「…うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっっ!!?」 突如祭壇上で響く悲鳴は空気を切り裂いて全員の耳へ殺到し、思わず身体が硬直する。 唯一祭壇上にいたミラのみが悲鳴に弾かれたように行動を開始し、そのまま杖を構えると流れるような動きで外傷を癒す効果のある魔法を構築すると、レイナスの足下にあるナニかに向かって魔法をかけているのが、ケイトの目に見えた光景である。 「くそっ、なんだよ、なんなんだよ!レイン!…あぁ、邪魔だお前ら、おらどけっ!どきやがれ!!」 一気に祭壇を駆け上がるケイトの目に飛び込んできたのは、息が止まる光景。 その場に腰を抜かしてし震えている青ざめた親友。 念話魔法によって他の教官に緊急連絡を入れる緊迫した表情の担任。 そして、上半身からの夥しい量の出血によって全身を血の海に沈めた、死ぬ寸前であろう黒一色の衣装を身に纏った女性の姿だった。
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