没落の名門《異界》運命の戦友

22/41
前へ
/373ページ
次へ
その後は大騒動であった。 理由は不明だが、レイナスが呼び出したと推測される瀕死の謎の女性はミラの回復魔法によって出血を抑えられた後、集まってきた複数の教官の手によって学院内の医務室へ搬送され、学院従事の医法師によって治療を受けた。 聞くところによると女性の身体には多数の古傷があり、特に目立つのが最近出来たものと思われる右頬の擦り傷、何かで筋肉が抉られていたという左肩。 また致命傷であった腹部中央と右胸の完全に何かが貫通したと思われる風穴で、そこからの大漁出血が彼女の命を風前の灯火にしていたらしい。 パニックに陥って中断された召還魔法の儀は、生徒達の動揺も大きく、安全に儀式を進攻出来ないだろうという判断が下されたため、後日に回されることになった。 その後、無事全四年生が召還と剣獣契約を終了することが出来た。 そして騒動の中心人物であったレイナスは、大漁の魔力を消費した一時的な魔力不足と、突然目の前に血濡れの女性が現れた精神的ショックからその場で気絶し、女性と同じく医務室に運ばれて寝かされ、その日の夜に目を覚ます。 付き添っていたケイトとミラに事の顛末を聞き、自らが召還してしまった謎の女性を複雑な心境が見て取れる表情で見つめていた。 そして無事に召還の儀も終わり、慌ただしく時間が過ぎた二日後の今日。 最後の講義を終えたレイナスは、一人医務室へ向かっていた。 あの女性の様子を見に行くためである。 レイナス自身も魔力不足とパニックで意識を失ったが、魔力不足で倒れるのは入学直後の魔力操作が今より困難であった一年生の時のほうが頻度もザラであったから慣れている。 あのパニックも目覚めた後は変に冷静になり、今では何故あんなにパニックを起こしたのか、自分でもハッキリとはわかっていない。 おそらく、魔力不足によって精神な不安定になっている時の急激なショックであったため、意識を失うほどの衝撃の大きさになった…と医法師は言っていたので、きっとそうなのだろう。 あの夜の医務室で目を覚ました時、そばにいてくれたケイトとミラ教官にはひたすら感謝の念と申し訳なさを感じ、それは涙となって溢れ出たが、ケイトは気にするなと笑い、ミラはその正体不明の女性をしっかり見ていてやれと叱咤激励を飛ばしてくれた。 本当に二人には世話になりっぱなしである。 いつか必ずや恩を返す事を心に誓ったレイナスだった。
/373ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3023人が本棚に入れています
本棚に追加