没落の名門《異界》運命の戦友

24/41
前へ
/373ページ
次へ
左右に6つずつ、計12の清潔なベッドが備え付けられた横に広い大部屋は左右の壁と各ベッド枕元に大きな窓があり、病室内を暖かい陽光が射し込んでいる。 レイナスは唯一使われている、カーテンで仕切られている左奥の別途を一瞬目に入れるが、すぐに病室入り口とは逆に位置する扉まで歩き、今度はノックをせずに扉を開けた。 扉を開けた先には、机に向かってカルテを記入している白衣の男性の姿。 部屋の壁中の棚には大漁の分厚い医学書や、瓶詰めにされた魔法薬の素材である薬草類、既に調合された魔法薬が配置されており、床には魔法薬の調合に用いる器具が転がっていた。 扉が開く音に振り向いた男性は一度手を止めると、入ってきたレイナスと顔を合わせる。 ボサボサに伸びきった白髪に、やる気の感じられない眠そうな目の奥では死んだ魚のような黒い瞳がレイナスの姿を辛うじて反射しており、また何日も寝ていないように思えるほど濃いクマはいつ見ても改善していることはない。 無精髭を蓄えて紫筒(異界における煙草)を加え、シワだらけの白衣を痩せた身体にだらしなく着た、生活力と清潔感皆無の男性は、この学院に勤める医法師。 名をクリストファー=バーテル。 数少ない平民から医法師となった人物で、『医神』として世界中に名を轟かせる超一流の天才医法師である。 幼い頃から医学を志し、それに没頭し続けた結果、彼の頭には患者を救うことしか頭になく、生活力と清潔感皆無の見た目になってしまったとか。
/373ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3023人が本棚に入れています
本棚に追加