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レイナスはベッドで眠っている女性をまじまじと見つめる。
(本当に綺麗な女の人だなぁ…)
規則正しく寝息を立てる女性の顔は作り物のように整っている。
鼻は高く、肌は陶器のように白く、睫毛は長い。
形の良い唇は口角からは呼気が漏れ、呼吸の度にミラほどではないが豊かな胸が毛布を持ち上げている。
今は毛布で隠れているが昨日見た四肢はスラリと延びており、かつ余計な筋肉や脂肪が一切ついていない肉体運動に理想的な形をしていた。
そして珍しい水に濡れたような漆黒の髪は、女性の腰辺りまでの長さがあり、部屋の窓から射し込んだ夕日を美しく反射していた。
あの時は慌ただしかった上、自分も気を失ってしまったために見た目を意識している暇もなかったが、落ち着いてから見た後はその女性の美しさに一瞬息が止まるほどだった。
おおげさではなく、これまでのレイナスの人生において、一番とも言える美しさを持っていた。
(きっと、事情を知らない貴族からの求愛とか凄まじいだろうな、この先)
基本的に貴族は自身の領地を治めるという立場であるためにその領地に暮らす立場にある平民を下に見る傾向が強く、貴族は貴族と婚姻を結び、よほどの物好きでもない限り、貴族は平民と結婚するという事は有り得なかった。
レイナスの出身であるベリサリウス家や、ケイトの出身であるヴォルスター家は国内屈指の名門として有名であった時から、平民を見下す事はなく、それは没落しかかっているベリサリウス家も今も変わらない。
現にレイナスの母親は平民出身であり、たまたま領地内の町に出ていた今は亡き父親が一目惚れして口説いたらしいこと前に聞いたが…
まぁ、世間的には貴族は平民と結ばれる事は滅多にないということである。
(いやいや、今はそんなこと関係ないし。この人が目を覚ましてから考えよう…そういえばケイトも後で行くって言ってたけど、セドリック教官に捕まってたもんなぁ…)
教室は一緒に出たのだが、扉の所でセドリック教官に呼び止められていたケイト。
どうやら以前の悪戯が発覚したとの事で、首根っこを掴まれてセドリック教官に引きずられていくケイトを哀れに見送ったのだ。
その際に「あとで俺も行くからなーっうぐえっ!ちょちょ、教官、ぐびが…ぐびじまっでるっでぇ!!」と言っていたが、どうやら説教と始末書はまだ長引くらしい。
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