没落の名門《異界》運命の戦友

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「あら、素直で助かるわ」 耳元で殺害宣告を受けたレイナスは、恐怖で凍りついた身体を何とか動かすと、万年筆が刺さらないよう僅かに首を縦に振って肯定の意を示した。 それを確認した彼女は全身から発する殺気を収めると、大胆にもレイナスの拘束を解き、今まで自身が横になっていたベッドに腰掛けて足を組んだ。 白く長い美脚が、病衣の裾がはだけて露になる。 「さてと、じゃあ質問に答えてもらうわね。一応言っておくけど、変な動きはしないほうが身のためよ?病み上がりとはいえ、あなたの命を引き剥がすのなんて一瞬なのだからね」 「は、はい…」 言われなくても、あの殺気を浴びた時から全く逆らう気なんて起きてこない。 後ろに回り込まれて押さえ込まれた時、自分はそれに全く気づきもせず、最悪あの場で自分は死んでいてもおかしくはなかった。 この女性の気紛れで今も生きているようなものであり、本当であれば自分はあの時死んでいたのだから。 レイナスは自分を見つめて怪しく微笑む、悪魔のよう女性を上目遣いに見て返事をする。 その笑顔の何と美しいことか。 なのにあの一瞬の出来事から、冷や汗が全く止まらない。 「じゃあまずは此処は何処なの?覚えてる限りでは、私は重傷を負って路地裏で倒れているはずなのだけど」 「ろ、路地裏…?すいません…そ、それについては僕は何も…。こ、ここが何処であるかについてはですけど、ここはアルヴィス学院の医務室です、貴女が倒れていたので治療を受けてもらっていたんです」 「…学院の医務室?ふぅん、何処の学校なのかは分からないけれど、随分個性的な学校なのね」 中世ヨーロッパみたい…ミッション系の学校なのかしら?と聞き慣れない言葉を呟きながら部屋の中を見渡す女性。 この女性について気になる事はレイナスも大量にあるのだが、今はとにかく大人しくしているのが先決だと既に結論が出ているため、次の女性の言葉を待つ。 「あぁ、そうそう。そういえばあなた名前は?」 「…レイナス。レイナス・フォン=ベリサリウス。ベリサリウス家の長男、次期当主後継者」 「へぇ、随分と大層な名前なのねあなた。まるでお貴族様ね。でもあなたのような容姿と名前の人間いるって事は、やっぱりミッション系の学校なのね」
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