土砂降りの夜《現世》血濡れの女神

8/10
前へ
/373ページ
次へ
大雨だった天候も徐々に移り変わり、次第に小降りになりつつある中、怒りに顔を歪ませるカフカと狂ったような笑顔に顔を歪ませる男は、それぞれに手に持つ装備を相手に突きつけて対峙する。 「許さない…絶対許さないから!」 「くくっ…僕としては親切心で教えて差し上げただけなんですがねぇ…まぁ、そろそろお開きにしましょうか、『アルテミス』『闇の淑女』『死神令嬢』カフカさん。今まで組織のために尽くしていただき、ありがとうございました。これからはゆっくりとお休みくださいな。では、改めて…死んで下さい」 言い終わるが早いか、ナイフを構えて濡れた地を駆けるカフカに対し、男は余裕を持って銃を構える。 如何に世界トップクラスといえど今は利き腕を動かせない手負いで、更に身体は雨と出血で冷えきっているためにトップパフォーマンスを発揮出来はしない。 そう考えていた男は、向かってくるカフカに狙いを定めて本日三度目の引鉄を引く。 放たれた弾丸は真っ直ぐにカフカに向かい、そしてカフカの左胸を貫いた…と思われた瞬間。 「…っああぁぁぁぁぁぁっ!!!」 「!?」 ガギンッと鈍い音をたてて、軌道がずれる弾丸。 カフカは怒りに震えながらも向けられた銃口の角度から銃弾の飛来する箇所を特定し、ナイフの腹をそこに置くことで銃弾から身を守ったのである。 そのままの勢いでナイフを構え直し、驚愕の表情で固まっている男に突進する。 男の瞳にカフカの姿が映るのをカフカ自身が認識出来る距離となり、瞬間男も体勢を立て直しを図るがもう遅い。 カフカが下から振り上げたナイフは、その鋭さによって男の右腰から左肩にかけて肉を裂き、大量の出血とともに男の意識を刈り取った。 声もなく血飛沫と共に倒れる男とすれ違ってからカフカは足を止めた。そっと振り返ると、倒れた男から流れる血液が地面わ赤く染め、小雨になりつつある雨がその血を洗い流しながら脇の排水溝へ流れていく。
/373ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3023人が本棚に入れています
本棚に追加