ラーメン戦記Y-UMA

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「豚骨ラーメンひとすじ、骨塚奉紅(こつづかぽうく)とは俺のことだ!」 「おいおい、同業者かよ。なら知ってるはずだ。Y-UMAは数が少なすぎて一つの種と認識されず、逆にワシントン条約に指定されていない。乱獲も合法なはずだぜ」 「ふん、違法なら俺が出向かず警察に通報しているさ。ただお前については少し調べさせてもらっていてな。栄養失調で悩む人々の救いであるY-UMAラーメンを金持ちの美食家にばかり振る舞い、法外な料金を請求するとは言語道断! 法が裁けぬ悪ならば、この俺が裁くまでだ!」  骨塚は札幌に豚骨を投擲した。札幌は縮れ麺のネットでそれを防ごうとするが、豚骨はネットを貫通し札幌の腕を貫通する。 「――急所は外したが、その腕では当分麺は捏ねられまい」 「っく、くそっ! 覚えていろよ!」  札幌は吠えると、元来た道を一目散に走り出した。 「さて、俺もせっかくここまで来たことだ。貧しい子供達のために最低限のY-UMAを狩っていくか」 「――待ちなさい」  女性の冷たい声とともに、骨塚のこめかみに冷たい感触が伝わった。 「いけないなぁ。女の子がこんな物騒なもの持ち歩いちゃ」 「警視庁ラーメン犯罪取り締まり課所属、竹田綿真(たけだめんま)。女でも立派な刑事です。――ラーメン特別指名手配犯、骨塚奉紅。大人しくお縄につきなさい」 「そんなこと言われてもなぁ。俺が栄養失調で苦しむ人たちのことを思ってやってるってことは綿真ちゃんもさっき聞いてたと思うけど?」 「そんなことは言い訳にはなりません。先程あなたがしたことは法的には明らかに傷害罪ですし、場合によっては人を殺めてきたこともあるでしょう」 「にしたってただのラーメン屋にいきなり拳銃は手荒だと思うんだけどな! っと」  骨塚は竹田の不意を突き、先程の戦いで散らばった豚骨を一本蹴り上げた。豚骨が銃身に当たる。銃を弾き落とすことは出来なかったが、安全装置を作動させるには十分な勢いだった。
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