11人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
生あくびをしながら新聞を畳んでいると、冷気が背中を撫でた。
振り返ると、案の定「閣下」だった。先頃から居着いた死神が、宙を抱き上げてベッドへ寝かしている。
何となく、舌打ちする。宙の半分ほどしかない彼女には出来ないことだ。
死神は眠る宙へ、キスでもしかねないほど顔を寄せ、頬や髪を撫でてから身を起こした。
そして次の瞬間には、もうソファーへ体を沈めている。
白く大きな椅子は、元々彼の為に誂えてあったかのごとく納まりが良い。
視線は宙へ向いたまま、足下の彼女など眼中に無さそうだ。
「……あんたさぁ」
肘掛けへ寄りかかったままの死神へ、声を投げてみる。
が、返事など無く、満足そうな息を吐かれただけだ。イラっときて声をとがらせる。
「とりあえず靴脱げや」
ラグを踏んでいるのは革靴だ。人外らしく足跡も何も残っていないが、感覚的に気に入らない。
とげのある低音が耳に障ったのか、やっとこちらへ目が向いた。
「お前はまたここへ居るのか」
「居ちゃ悪ィか。こちとら住んでんだ」
「この部屋の者では無いだろう? あちらの」
「エリーズなら今日も散歩中だ。そうでなくったって坊主は日がな一人で遊んでんだから、オレがこっち居たっていいだろ」
死神は、言われた言葉を吟味するように黙った。
それをいいことに、新聞を丸めて小脇に抱え、部屋を出る。
隣の物置部屋へ放ると、キッチンへ向かった。
最初のコメントを投稿しよう!