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     生あくびをしながら新聞を畳んでいると、冷気が背中を撫でた。  振り返ると、案の定「閣下」だった。先頃から居着いた死神が、宙を抱き上げてベッドへ寝かしている。  何となく、舌打ちする。宙の半分ほどしかない彼女には出来ないことだ。  死神は眠る宙へ、キスでもしかねないほど顔を寄せ、頬や髪を撫でてから身を起こした。  そして次の瞬間には、もうソファーへ体を沈めている。  白く大きな椅子は、元々彼の為に誂えてあったかのごとく納まりが良い。  視線は宙へ向いたまま、足下の彼女など眼中に無さそうだ。 「……あんたさぁ」  肘掛けへ寄りかかったままの死神へ、声を投げてみる。  が、返事など無く、満足そうな息を吐かれただけだ。イラっときて声をとがらせる。 「とりあえず靴脱げや」  ラグを踏んでいるのは革靴だ。人外らしく足跡も何も残っていないが、感覚的に気に入らない。  とげのある低音が耳に障ったのか、やっとこちらへ目が向いた。 「お前はまたここへ居るのか」 「居ちゃ悪ィか。こちとら住んでんだ」 「この部屋の者では無いだろう? あちらの」 「エリーズなら今日も散歩中だ。そうでなくったって坊主は日がな一人で遊んでんだから、オレがこっち居たっていいだろ」  死神は、言われた言葉を吟味するように黙った。  それをいいことに、新聞を丸めて小脇に抱え、部屋を出る。  隣の物置部屋へ放ると、キッチンへ向かった。  
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