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  「……まあ、そうなのかもしれねぇな」  笑みを誤魔化すつもりで息を吐けば、思いの外、穏やかな声が出た。  この死神と初めて言葉を交わしたとき、師を思い出した理由がおぼろげながら分かった。  好奇心。  ともすれば、知らぬもの全てを自分のものとしたいという傲慢さかもしれない。  しかし、知りたいという欲求そのものは、無垢なものだ。と思う。  何でも知り得る人外のはずなのに、探求心がある。  そこが、たぶん似ている。 「あんたが悩んだって仕方無ェよ。オレが何なのかってのは、オレも知らねえ」  言うと死神は興味を持ったのか、先を促すように僅かに首を振られた。  何だか面白くなり、芝居がかって両手を広げ、続ける。 「目が覚めたら、何か知らんがこの家に居た。字も読めるし話もできる。でもココの地名も技術も、オレの居たとことは全然違う。つーかそもそもサイズが違う。こりゃ悩んだって仕方無えだろ」  思案顔のまま聞いていた死神は、思いついたようにぽつりと言った。 「界が、違うのだろう」 「界? 世界のことか? あぁつまり異世界人?」  言いながら、刃が嬉しそうに笑みを広げる。 「イイねソレ。ロマンがあんね」  死神は、呆れたように目をよそにやった。 「……そうだとして、生まれ育った地へ戻る気は無いのか」 「そりゃあ……」  言いかけて、刃は苦い顔になった。戻りたい気持ちは無いでもない。残してきたものもある。  だが、死神相手に身の上話をする気も起きなかった。 「無理だね。オレにも事情がある」 「事情?」 「聞くかア? 何にもならねえよ、めんどくせェ」  横を向いてしまった彼女を、死神がまじまじと見る。  腰へ届きそうな長い黒髪。引き締まった体躯。険のある顔はまだ若く、宙の前ではよく笑う。つった蒼眼は時折、ただのどかに生きてきた人間には無いものを宿す。  口元へ、興味深そうな笑みがのぼった。  
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