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  *****    物心ついた頃には、盗賊団のなかで育っていた。  何人か子供も出入りしている、山の中に建った大きな家。  盗賊のアジトといっても綺麗な木造の屋敷で、昔は貴族の別荘だったらしく不自由することは無かった。  大人は、まだぎりぎり子供のような年頃から白髪頭の爺さんまで、10人程居た。  その中で、いちばん若い二人の家に住むようになったのは、学校に入る年頃になってからだ。  その二人は孤児で、自分もそうだと聞かされたのは、たしかその頃だった筈だ。とくに何も感慨が無かったのは覚えている。 「遠くじゃ戦もあったし。神さんなんざそこらじゅうに居るようなもんだったしな。  その気まぐれやらとばっちり食らう人間も、いくらでも居た」  そして、一緒に住むようになっていた子供と一緒に、初等科へ入学した。 「そこの魔法学の先生やってたのが、さっきのを言ったセンセ。オレの……なんだ、養母の、妹のダンナで」  卒業後に知ったが、養父はともかく、養母は元天使だった。創世神話にしか名前の出てこない、3人のうちの一人。  その妹も同じくだが、姉妹そろって、連れ添いができて以来「そういうのはもうやめた」らしい。  しばらくして、先生夫妻が、世界を造った女神の両親だと知った。 「聞いたことないだろ? そんな肩書き全部無かったことにして、ガッコの先生やってるなんざ。  …まぁそんなセンセから魔法のイロハをならって、そっちと全然関係無ェ偏屈師匠から剣を叩き込まれて」  盗賊団を継いだり相棒が失踪したり帰ってきたりと色々あって、自分も娘が出来た頃。  世界に穴があいた。  具体的に何がどうなっていたかはよく分からない。この世の終わりのような災害が次々起こり、冗談のように巻き込まれ、結局けりをつけることになった。 「フタよフタ。穴ァあいたから何か貼っとけってヤツ」  女神によって人柱のごとく封じられ、気がつけばこの家で目を覚ましていた。  
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