2.どちら

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初見さんの言うことを、僕はいつも聞いてきた。消しゴムを貸したこともあるし、給食の時間には嫌いだと言う牛乳を毎日貰っている。僕だって牛乳はあまり好きじゃない。それでも初見さんが喜んでくれるから僕はいつも牛乳を飲んでいる。  中島は考える。こうして見ると、ほとんど初見さんだと断言してもいいのではないか。だって僕のことを見ている女の子なんて、初見さん以外に思いつかないじゃないか! そういえば今日の朝の挨拶は余所余所しかった気がするし、忘れ物もやけに多い。今日なんか筆箱を忘れたから、シャーペンと消しゴムを一日中貸している。  これはもう決まりなんじゃないか。中島は自分でも頬が赤くなっているのが分かった。給食の時間だってそうだ。いつもは僕が初見さんのお盆から牛乳を取るのに、今日は初見さんが僕に手渡してくれた。これって、そういうことなんじゃないのか?  中島はソワソワしていた。相手が誰であるか分からないけれど、ほとんど見当をつけたと思っているのでソワソワしっぱなしだった。それ以上にドキドキもしていた。いっそのこと話しかけてみようかとも考えるが、折角手紙を貰ったのだから、書かれている通りにしようと思った。初見さんの方にだって、きっと心の準備があるはずだろうから。だって誰かに告白するって言うのは、みんな緊張するものなんでしょ。僕みたいに冴えない凡人にだって、ドキドキはしているはずだ。ソワソワもしているかもしれない。  そうして悶々としたまま、妄想と闘いながら、時間は流れて行きついに放課後になった。中島はいつもの数十倍遅い動作で荷物を鞄に詰め込んでいる。じっとしていることが出来なかったからだ。隣の初見さんを意識しながら、丁寧に鞄に教科書を詰めていく。
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