2.どちら

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 さあ、どっちでしょう。中島俊之は幸せだったのか不幸せだったのか、果たしてどちらでしょう。出てくる主人公はもちろん中島俊之だ。彼は現在中学二年生。これといって特徴のない可もなく不可もない、ありふれた生徒だ。誰もが描く普通の子。それが中島俊之君である。  そんな彼が主人公と聞いて、やや不思議に思われるかもしれない。平凡な男子中学生が突然非日常に投げ込まれて何やかや、生きるとは友情とは己とはを考え考え現れる敵をちぎっては投げちぎっては投げ、というお話になるのなら、主人公というスポットライトにこれから当たるというのなら、平凡であろうと不思議はない。むしろ平凡でいる方が、憧れや共感が生まれやすいというものだ。  しかしながら中島俊之君。平凡のまま話は進む。非日常などが入りこむ余地のないほどの、これでもかという現実の中でお話は展開し、終了する。これといった山場も修羅場も存在しない。あるとすれば、平坦な道。これがまた思いの外平坦である。本人が特別だと思っていれば思っているほど、傍からすればこれといって特筆のない一日となってしまう。そりゃあ当然だ。他人事なんだから。  というわけでこれから中島俊之君について話していこうと思うのだけれど、一応注意しておこう。この話に裏切りはない。あっと驚く伏線だって用意していない。先に話したように山場も修羅場もないのだ。ただただ俺は問いたいのだ。中島俊之君について質問を投げかけたいだけ。それを踏まえてこの先を読んでくれるとありがたい。
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