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「あー!遊んだー!もぉクッタクタやー」
「あんなにはしゃぐからだよ…」
ゲームセンターから出てきた僕達は体力の限界が来ていた。
「じゃあ電車の時間も近いし、帰ろうか」
「せやな、今日はありがとうなー!」
屈託のない笑顔で礼を言われ、むずむずしながら僕達は帰路についた。
日も傾き、帰宅ラッシュで通行量が増え、五月の暑さも相まってむせ返る様な熱気が立ち込めるスクランブル交差点を歩く。
「なぁ夕、あれ、なんや?」
突然立ち止まり和が問いかけてくる。
通行人に嫌な顔をされながらも和が指差す方向を見た。
「扉…?」
扉だった。スクランブル交差点の真ん中に扉があった。
さも当たり前の様に、でも不自然に立つ扉が視界に入った瞬間世界が遠のいた気がした。
通行人の雑踏が遠くに聞こえる。
扉以外モノクロに見える。
気がついたら僕達は吸い込まれる様に扉の方に歩みを進めていた。
【心が奪われる】始めてそんな体験をした気がする。
ドアノブに手を掛け扉を開ける。
さっきまで聞こえていた雑踏も聞こえない。
さっきまでいた通行人もどこにも居ない。
一つだけ見えるもの。
それは、人間の文明が奪ってきたもの。
それは、あまりに幻想的で人々の【心】を惹きつけるもの。
一つだけ見えるのは、
足元に広がる、『満天の星空』
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