前進-2

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学校帰り、仕事がない私と愛理は 制服のまま、買い物に行くことにする。 自由が丘のショッピングモール。 そこの電化製品店のテレビを観て、 愛理が指を指した。 「ワイドショーのインタビューに潤平 出てる」 「えっ」 私は周りの人間が、自分を見ていないことを確かめてから、そのテレビ画面を覗きこむ。 「今度の新人モデルの女の子とは、交際順調ですか?!」 【モデル食い】なんて悪名がついたのは、 共演したモデルと必ず噂になってしまうから らしいけど、 「………順調ですよ」 テレビの仕事もこなす潤平を、テレビ局前で捕まえた記者は、どうしても、遊び人とした報道したいらしい。 『………否定してくれたらいいのに』 また、会いたいと、 私を成功させたいとも言ってくれた潤平。 あの子に、そんな力はないと思うのに、 正直とても嬉しかった。 「また、食ったら、捨てるんですか?!」 その悪意のある質問に、 「MIHOちゃんは、 俺が手が出せないほど、純粋な子ですから、 大切にしたい人です。」 その質問を投げ掛けた記者が、直ぐに言葉が出せないほど 19才とは思えない紳士的な答えを、 報道番組から 世間視聴者や私の心臓にまで 「………そ、そうなんですか? 仲良くされてくださいね!」 ″ 高好感度 ″ という贈り物に変えて届けてくれた。 「美穂、思われてるね」 愛理につつかれても、そこから動けない私の存在に、 店内の客の1人が気づいてしまったようだ。 「生MIHOだ」
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