前進-2

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運転しながら、薫との電話を聞いていた角野さんは、 ミラー越しに、私を哀れんだ目で見つめていた。 「MIHOは、まだ駆け出しのモデルなのに………」 「……あ、手が早いって言うのは、勝手な私の速鷹さんのイメージで………」 「芸能の学校やうちの事務所紹介した時点で、MIHOは、あの人の手中の女って、わかってたよ」 「………………」 ″ 手中………″ それとは、ちょっと違うような気がするんだけど……… 「速鷹さんとの関係も、潤平との交際も口外したらダメだよ」 業界のしきたりや、タブーも熟知したかのような口ぶりの角野さんは、 一変して数日後の仕事の件を話すと、 私をマンションで下ろし、勢いよく次のタレントの元へ車を走らせていってしまった。 『潤平も速鷹 薫も、 付き合ってるわけじゃないのに』 新人アイドルや女優のマネージャーもこなす角野さんは、 私の知らない芸能界の話も沢山知ってるんだろうな。 少しは彼の言うこと きいておこう。 ♪♪チロリン 自宅に入った途端、潤平からメールが届く。 【撮られちゃってゴメンな】 週刊誌のこと、気にしてるんだ。 【潤平君、もう会えないかもしれな いよ】 キスはしても まだ、この人を好きなのか分からない私は、 結果だけを、言葉足らずで返信してしまう。 ♪♪チロリン 『あ』 【俺は、会いたいよ】 同じ言葉足らずでも、 人の気持ちを動かすメッセージって、 あるんだね。 続けて来たメールは、 【MIHOちゃんを、 一流のモデルにしてあげたい】 私の心に、ズシンと、重りをおいたみたいだ。
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