61人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
運転しながら、薫との電話を聞いていた角野さんは、
ミラー越しに、私を哀れんだ目で見つめていた。
「MIHOは、まだ駆け出しのモデルなのに………」
「……あ、手が早いって言うのは、勝手な私の速鷹さんのイメージで………」
「芸能の学校やうちの事務所紹介した時点で、MIHOは、あの人の手中の女って、わかってたよ」
「………………」
″ 手中………″
それとは、ちょっと違うような気がするんだけど………
「速鷹さんとの関係も、潤平との交際も口外したらダメだよ」
業界のしきたりや、タブーも熟知したかのような口ぶりの角野さんは、
一変して数日後の仕事の件を話すと、
私をマンションで下ろし、勢いよく次のタレントの元へ車を走らせていってしまった。
『潤平も速鷹 薫も、
付き合ってるわけじゃないのに』
新人アイドルや女優のマネージャーもこなす角野さんは、
私の知らない芸能界の話も沢山知ってるんだろうな。
少しは彼の言うこと きいておこう。
♪♪チロリン
自宅に入った途端、潤平からメールが届く。
【撮られちゃってゴメンな】
週刊誌のこと、気にしてるんだ。
【潤平君、もう会えないかもしれな いよ】
キスはしても まだ、この人を好きなのか分からない私は、
結果だけを、言葉足らずで返信してしまう。
♪♪チロリン
『あ』
【俺は、会いたいよ】
同じ言葉足らずでも、
人の気持ちを動かすメッセージって、
あるんだね。
続けて来たメールは、
【MIHOちゃんを、
一流のモデルにしてあげたい】
私の心に、ズシンと、重りをおいたみたいだ。
最初のコメントを投稿しよう!