前進-2

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「入部決めた?」 体育館のステージ側で、背筋力を計るテストの順番待ちの際、 後方で、 反復横とびの順番待ちをしていた、 クライミング部の部長、沖田君に声を掛けられる。 「あ、その話なんだけど………」 そうだ、 その気になったら、申し込みをするとかって話だったのに、 すっかり忘れていた。 「事務所に反対されたの、 ケガしたら、仕事に影響でるからって」 一応、マネージャーには聞いてはみたんだけど、 『何で、よりによってクライミング? 水泳とかダンスとか、ためになるやつ、あるだろう?』 予想通りの返事をもらったんだ。 「………まぁ、そう来ると思ったよ」 沖田君は、別に不快な顔をすることもなく、女子の屈伸する姿や、列を乱して喋る姿を目で追いながら 「興味を持ってくれたことが嬉しかったんだよ、うちの部、女子少ないからさ」 笑顔さえ浮かべてくれていた。 「………うん、興味は凄くあったよ。 怖いのに、てっぺんまで登りきってみたいって」 速鷹 薫がやってるから、だけじゃない。 「………ふぅん、 モデルやめたら、やってみたら?」 濡れた感じの校則違反の茶色い髪を かきあげながら、 にこっと微笑みかけるその沖田君の顔は、 『やっぱりモテそうだ』 芸能人を見慣れてきた私でも、一瞬見とれるほどで、 そんな彼を好きな女子は多いのも現実、 「巨乳デカ女が、沖田君、誘惑してた!」 私をよく思わない女子が、 露骨にそれを口に出しているのが聞こえると、 ちょっぴり、 昔を思い出してしまう。
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