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「中間終わった~!遊ぶぞ~」
「また、部活始まるよ」
テストが終わった途端、総合コースやスポーツコースの教室から元気な声が聞こえてきた。
芸能コースの子たちは、校風に逆らうように、
愛理同様、定期テストにはあまり力を入れてないようだ。
「………………まだ、授業残ってるよ、早退?」
撮影が入ってしまっているため、テスト終わりと同時に学校から出ようとする私を、
職員室から出てきたクライミング部の、
沖田くんが声をかけてきた。
「うん、撮影が入ってるの」
一見、チャラく女にモテそうな彼は、
成績はどうなのだろう?
「沖田君、テスト、どうだった?」
靴を履き、上履きを下駄箱に入れる際、
慌てて閉めた鞄のファスナーが少し開いていたのか
中から、ポーチ袋が落ちてきた。
「あ」
「英語だけは得意だよ………ほら、落ちたよ」
俊敏な彼は、
長い手を伸ばしてそれを拾い上げてくれた。
それは、
男子には見られたくない袋で、
「あ、ありがとう!」
元々、バッグの中身とか整理するのが雑な私の、
生理用品入れだった。
思わず手荒に受けとる。
『中、見えてないよね?!』
「大変だね、そんな日も撮影なんて」
無表情な沖田くんの口から、
どうでもいいほどの小さな願望を打ち砕く言葉が返ってくる。
私の顔は、
きっと真っ赤になっていたに違いない。
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