恋とキズ

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「MIHOちゃん、バブルリングできる?」 「え?」 五年ぶりにプールに入り、沈まない事を確認できた程度の私に、 また難しい要求をしてくるプロデューサー。 「 なんですか?それ………」 「水中のにできる輪っか、空気遊びだよ」 「なんか、イルカが遊んでる映像で、そんなの見た事ありますけど………」 それを、どうやって作れと……… 寒さで体温が下がり、早く撮影済ませたいところなのに、 映像美にこだわるプロデューサーは、 そのバブルリングの作り方をわたしに説明。 そのリングを作った中を私に泳げという。 「………私、ダイバーじゃないんで、そんなに長い間プール潜れませんよ」 化粧品を売るためのモデルに、何でも要求し過ぎだよ。 「なんだ、MIHOちゃん、泳ぎとか全部得意そうなイメージあったんだけどな」 身長高いと、身体能力まで高いまでと勘違いされることは多々ある。 ″ 使えねーな″ みたいな渋い顔をしたプロデューサーは、スタッフの皆に 「バブルリング作れるやついないー?」 と、聞いてまわっていた。 ………そんな思い付きで時間とらせないでよ、最初のコンセプトのやつでいいじゃない。 「………ックシュ!」 空を見ると、 夕日が見えていて 『潤平と会う時間、ないかもしれない』 ますます身体が冷めていくような気がした。 「お疲れさまでしたー」
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