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「学校は楽しい?」
「………普通に通えてます」
お言葉に甘えて、自宅近辺まで送ってもらう中、
仕事場から離れると、プロデューサーの横顔は、
ますます、普通のそこら辺にいるお父さん達のように見えてきた。
「MIHOちゃん、ちょっと、気になった事があったんだけど」
ハンドルを握ったまま、
そのCMプロデューサーは私を見ない。
「………なんですか?」
「背中の傷というか、火傷、あれ、どうしたの?」
私の傷口を直視できないのは、
大人特有の気遣いなのかもしれない。
速鷹 薫との、ホテルでの夜を思い出した。
「子供の時に怪我したので、覚えてないんです」
「………そうか」
____嘘だ。
本当は、鮮明に覚えてる。
「ホントに自宅じゃなくていいの?」
これは、
お父さんが私を抱いた夜に、
そばに置いていた角灰皿を、過って、
私の背中に落としたからだ。
「はい、この店に友達がいるので」
あのとき
煙草の火は、
まだ、赤かった______
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