恋とキズ

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「HISEIDOの社長の愛人だったんだ」 CMプロデューサーの言葉で、一瞬、″ 薫 ″ の顔が浮かんだけど、 薫は、現地点では、社長ではない。 「………それは、紅子が、枕してたってことですか?」 ″ 男に惑わされてはダメよ ″ あの時の紅子の目は、 報道や噂のように病んではいなかったけれど、 希望の色を放ってはいなかった。 「枕、枕って言葉が乱用されてるけど、 紅子の場合は、 速鷹のじいさんが異常に惚れ込んでしまって、その女の生活全てを面倒見ていたような状態だったんだ」 「………じいさん」 HISEIDOの社長って、薫のお父さんだよね? 何歳くらいなんだろ? 「紅子も、あんなジイサンに抱かれてでも専属モデルの座と、贅沢三昧の生活を手に入れたかったんだろうな。 それなら、ジイサンが死ぬまでそれを維持してればよかったのにさ」 ペラペラと、 トップモデルの私生活を、私に喋り続ける男の手は、 私の制服のシャツのボタンとボタンの間に、 その湿った体温を忍び込ませてきていた。 「紅子は、拒否してしまったんですか?」 ………こんなところで、 年齢が親子以上に離れた女の胸、 触って 恥ずかしく はないんだろうか? 「そ、好きな男が出来たって。馬鹿な女。 それから、紅子は業界で干されてしまったんだ」 何も感じないけれど、 気持ちだけは不快で、 その卑猥な動きをする手を右手で制する。 「………私は、あなたを拒否したくらいじゃ干されませんよ」
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