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数日後、
定期テスト開始日、いつもより早起きして朝の報道番組を何気に観ていたら
「今年春からのHISEIDO新商品のCM起用の突然の契約破棄といい、
仕事のドタキャン等から信頼性がなくなって仕事激減にあった最中の行方不明、
紅子さんは、心療内科に通っていたとも噂されてしますし、今後が心配ですねー」
爽やかな朝のイメージのキャスターが、
上っ面だけの心配そうな表情を浮かべて、紅子の映像を見ながら話しているのを見ると、
なぜか無性に腹が立った。
『この間、青山で見かけた時は、
そんなに病んでいるように見えなかった』
ビルの広告が外された時点で、
きっと、何かトラブルがあったに違いない。
この業界にいたら、そんな裏の話も耳に入ってきそうだけど、
『今日、テスト終わったら、潤平に電話してみよう』
まだ、
17歳で、
事務所と現場しか他人と接点がない人見知りの私、
蓄積される情報は、素人程度だった。
「美穂、テスト終わったら、今日遊べる?」
学校で、悪あがきに近い暗記を繰り返す私の席に、
呑気に愛理が携帯をいじりながら近寄って来た。
「え?明日もテストだよ」
「そんなに頑張らなく たっていいんじゃないの?明日は国語と数学の2教科だけだし」
「私は、前の学校の時に成績悪かったから、ちょっと頑張らないと、マズイんだよ、卒業にひびく」
「えー?じゃ、いつ修学旅行の買い物行くの?!」
福岡の学校の時は、
芸能界の仕事していると、成績が下がっても仕方ないと、
それでも進級できるような ゆるい空気の中で、それに染まっていた。
「必ず、そのうち合わせるから」
けど、この学校では、
どのコースの生徒にも、おんなじレベルの成績を求められる。
「ほんとだよ?私はあんまり、仕事入ってこないし、いつでも合わせられるよ」
薫が、
この学校を私に斡旋してくれたことに、
ちょっとだけ感謝していた。
「愛理は、これからだよ」
仕事と、
学業と
忙しいほうが、
前向きになれるような気がするから。
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