19/40
前へ
/40ページ
次へ
浴槽に貯められていくお湯は透明なはずなのに、 デザインのせいで、緑色に見えるそれを背景に、 潤平は、 一見 無表情にも見える顔のまま、 上半身下着だけになった私を優しく見つめる。 「……大事に、したかったんだけどな」 私と、セックスをしないことが 大事にすることになるのかと言えば、 けして、そうじゃないよね。 「私の過去の一部を受け入れてくれたから、 私も潤平を受け入れたい」 私を、 裏切らないで。 「…………一部?目を二重にしたこと?」 潤平は、クスリと笑うと、 ゆっくりと残った私の衣類を剥いでいく。 「そう。」 「それだけじゃないんだ?何でも話してよ」 「………………うん」 お父さんのことは、まだ、言えない。 「美穂ちゃん、痩せた……?」 「うん、少しね。太ったからヨガに通い始めたの」 「胸から下が細くなってる」 あなたの事も傷つけないから、 私のことも、傷つけないで……。 潤平は、しゃがんで、 私の胸と、胸骨の間からお臍までの部分に ゆっくりとキスをした。 「美穂は、俺だけのもの…………」 優しいキスと、舌を使った淫らなキスの繰り返 し のなかで、 「…………っ」 浴槽の緑に、 真新しい記憶の 沖縄のエメラルドグリーンの海を重ねていく…… いつか、そこに 二人で行きたいね。 「潤平も、感じて……」 唇を合わせたまま、 慣れない手つきで、 潤平のジーンズのベルトを外すことを試みる。 だけど、それは、潤平の体を刺激するだけで、 なかなか上手くいかない。 「大丈夫、自分で脱ぐから」 笑い出した潤平にその手を、掴まれた。 「大事にするから」
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

147人が本棚に入れています
本棚に追加