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「もしもし?!潤平?」
修学旅行中、ずっと連絡がなかった潤平に走るタクシーの中から、思わず電話をかける。
「美穂ちゃん、どうしたの?」
電話越し、潤平の声は、何となく忙しそうだった。
「仕事中ごめんね、今ね
紅子さんに似た人を見つけたの」
あんなに美しい女性は、滅多にいない。
なんで沖縄に居るのかはわからないけれど、
「それ、どこ?沖縄?」
潤平を好きだと言う沖田くんなら、
姉のモデル紅子の事も、それなりに注目していたはずだから、見間違いの可能性は少ない。
「そう、なんか怪しい街中だったから」
ネオンはあるのに、
人があまり歩いていない街。
「俺は噂で、姉さんは大阪か福岡にいるって聞いて、今大阪に向かっていたんだ。」
仕事中ではなく、
移動中だった潤平。
「そこに、美穂ちゃんは行かないでいいから、そこの写メ送って」
「わかった!」
タクシーの運転手さんにお願いして、
少し戻ってもらう。
「頼むから、そのタクシーから降りないでくれよ」
沖田君は、一言も言葉を発しないまま、
ただ、
私と潤平の電話でのやり取りを、黙って聞いていた。
「俺は一人では 行かないから安心して、残りの旅行楽しむんだよ。」
お姉さん思いの潤平……、ずっと紅子の行方気にしてたんだね。
「また、連絡する」
私には、悟られないように
心の中は
静かな嵐が起こってたんだ。
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