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「未来化粧品のMIHOさんだね?」 そう言って 私に握手を求めてきた中年男性。 「この人は、雑誌【エルス】の日本版編集部の人だよ」 と、 薫が、軽く私に紹介してくれたけれど、 「【エルス】?!あの世界で刊行されてるファッション雑誌の?!」 世界43ヵ国で刊行され、そこで起用された服やモデル、デザイナーは必ず一流になれるという噂の、 モデルの誰もが憧れる雑誌の関係者だった。 「いつか、一緒に仕事したいね」 白髪混じりのその男性は、 私を娘でも見るような優しい瞳で見つめ続けた。 「は、はい、その時を楽しみにしています」 嬉しくなって、求められた握手も、 向こうが離すまで、ずっと続けていたし、 名刺を渡されると、 私も 最近持たされているモデルとしての名刺を差し出して、 つい、連絡先の交換までしてしまった。 「お、利用時間が、もう終わりそうだね!」 館内に、業務終了の音楽が流れだして、 そのエルスの編集者や薫、他の客もいそいそと更衣室へ向かいだす。 「あ、お前、マネージャーか誰か待たせてるの?」
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