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お父さんは、検査キットを丁寧に袋に入れたあとに、更に箱状のケースにしまって、上着のポケットに納めていた。 「………………顔が変わってしまうと、ますます他人みたいだ」 そして、複雑な表情を浮かべて 脱力して起き上がれない私の顔を改めてじっくり見ている。 「……帰って」 あんなに受けたくなかった鑑定を、 こんな一方的に押し進められるとは思ってなくて、 自分が本当に愛されてはいないんだと、 強く思い知らされてしまう。 ____もう、こんな時間は要らない。 「泣いたら、抱き締めたくなるから、泣かないでくれ」 私を見つめ続けるお父さんは、 さっき、私の口の中に押し込んだ指を、 今度は私の首筋に当ててきた………… 「触らないで」 拒絶の意志を、強く見せたその時____ ピンポーン…… 誰かが部屋を訪れた。 『____薫?!』
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