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薫の車から降りた私を沖田くんも見ていたのか、
だいぶ良くなった腕で、髪をかきあげながら話しかけてきた。
「……そう。あの人が速鷹さん」
「こんな朝から一緒にいるって、きっと記者ならゴシップとして取り上げるよ」
染めていない茶色い髪が、
朝の日差しでキラキラしててた眩しい。
普通コースの生徒なのに、
まるで芸能人のような沖田くんは、
やっぱり、女子の注目の的だ。
「…………マンションに誰かが張ってて帰れなかったから……」
本音、あんまり学校では一緒に歩きたくない。
「ふぅん。でもあの人事務所の人でもないし不思議な関係だね。
潤平とは会ってるの?」
「…………今日、会うよ」
潤平を好きな沖田くんからすると、
面白くないのかもしれない。
潤平を窮地に追い込んでいるかもしれない薫と、
私が一緒にいること。
「そう。
俺は、潤平にはモデルとして輝いていてほしいから、その妨げになるものが身近にあるなら
どうにかしたいって思う」
沖田くんが、わたしに優しかったのは
私が潤平の恋人だから。
「私も、おんなじだよ」
沖田くんの冷たい顔と、
出会ったばかりの頃の薫の顔が、
私の頭のなかで重なって見えた。
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