cry

27/29
88人が本棚に入れています
本棚に追加
/29ページ
「この部屋 一番高いんじゃないんですか?」 こんなホテルの部屋に泊まったことない。 窓からは、 汚れた空気が嘘のような、 宝石箱のような夜景が一望できる。 「君と仲良くなりたかった彼らもここにいるはずだったからね」 美容整形の権威、大塚氏は、 それを想像して鳥肌が立ちまくりの私を少し微笑んで見ていた。 「なぜ、私を選んだ?」 出演する人気番組のスポンサーで、 整形に携わり、 HISEIDOの幹部とも交流がある。 ____きっと、何か知っている。 「さっきも言いましたけど、優しそうだったから……」 ソファーに腰かける大塚氏は、 何がおかしいのか吹き出して笑っていた。 「私は優しくなんかないよ」 適当な発言だったけど、 私の直感だった。 「S気質がなきゃ、女の健康な体にメスなんか入れられないからね」 「……それは、あなただけでは?」 私も二重瞼の施工を受けたけど、医師は普通の人だった。 「そうかもしれないね」 立ちっぱなしの私に、やっと、性的な視線を向けだした男…… 「何かお喋りしながら、服を脱いでごらん」 初めて遭遇する人格を見せ始めた。 ″ お喋りって… …″ 私の直感を、確かめてみよう。 私は、 アイドルグループの衣装のような、 セーラー服仕立てのワンピースの横ファスナーを下げて、 勇気を出して、ストレートに聞いてみた。 「速鷹 薫の整形をしたのは、 あなたですか?」
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!