紅-2

6/7
52人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
空港に向かうはずの車は、 都市道から高速道路へ入ろうとしている。 「……山本さん?忘れ物です?」 薫の親友で、 信頼できる業界人のはず……。 運転をしているカメラマンの助手も、 乗車してから、一言も口をきかない。 「山本さん!」 きっと、ただ事ではない。 まさか……………… 「紅子…いや、紅子さん、ほんとに すまない」 「えっ」 返事をしないまま、 山本さんは 、「そこの端にいって」と、運転している助手にパーキングで車を止めるように言った。 「……一体なんなの?」 パーキングの一番端に止まられた車。 直ぐに、ワンボックスの車が横付けしてくる。 山本さんは、 後部座席の窓を開けて、 「おっしゃる通り連れてきましたよ」 ワンボックスの開いた窓に向かって、声をかけている。 「ご苦労様。……約束通り HISEIDOの広告には、山本くんの写真使うから」 「あざっす!」 その低くも 艶のある声の持ち主、 「紅子さん、約束守らなかったわね」 やはり、速鷹社長の奥様だった。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!