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「その子には何もするな」
薫の声で、
男達の手が一瞬、自分の体から離れる。
「香港の海でサヨナラするあんたの命令なんか誰も聞かねーよ!」
だけど、
もう上司ではないという意識が、
欲のままに体を動かせてしまうのか、
一人が私の上に馬乗りになってきて、
「悪い話じゃないから最後まで聞け!」
薫の、更にハッキリした声が完全に男達の動きを止める。
「お前らの会社の金の使い込み、……父さんと俺に擦り付けて殺したところで、
担保には入っていない俺らの財産は、
他人のお前らには 絶対に手に入らないぞ」
縛られたままの薫が、
起き上がり
入り口の大塚医師の方に鋭い視線を向けた。
「香港に着くまで、彼女に手を出さずに……
そして、再び日本に俺を帰してくれたら、
俺は家もマンションも 貯金も 全てをお前らに明け渡してやる」
___交換条件……
「フン……自分が一番大事なのは、母親譲りだな」
半分呆れたように笑った大塚医師は、
「降りてやれ」
私に覆い被さっていた男の頭を軽くドついて、
「また、おあずけ?!」
「香港に着くまで三人にしてやろう」
あっさりと コンテナから出ていってくれた。
「……お父さんは、呼吸してるか?」
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