カオルⅡ-2

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「その子には何もするな」 薫の声で、 男達の手が一瞬、自分の体から離れる。 「香港の海でサヨナラするあんたの命令なんか誰も聞かねーよ!」 だけど、 もう上司ではないという意識が、 欲のままに体を動かせてしまうのか、 一人が私の上に馬乗りになってきて、 「悪い話じゃないから最後まで聞け!」 薫の、更にハッキリした声が完全に男達の動きを止める。 「お前らの会社の金の使い込み、……父さんと俺に擦り付けて殺したところで、 担保には入っていない俺らの財産は、 他人のお前らには 絶対に手に入らないぞ」 縛られたままの薫が、 起き上がり 入り口の大塚医師の方に鋭い視線を向けた。 「香港に着くまで、彼女に手を出さずに…… そして、再び日本に俺を帰してくれたら、 俺は家もマンションも 貯金も 全てをお前らに明け渡してやる」 ___交換条件…… 「フン……自分が一番大事なのは、母親譲りだな」 半分呆れたように笑った大塚医師は、 「降りてやれ」 私に覆い被さっていた男の頭を軽くドついて、 「また、おあずけ?!」 「香港に着くまで三人にしてやろう」 あっさりと コンテナから出ていってくれた。 「……お父さんは、呼吸してるか?」
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