45人が本棚に入れています
本棚に追加
「お父さんは、呼吸してるか?」
薫の声でハッとして、涙を拭いて立ち上がる。
奴らが出ていったコンテナは、
とても広く感じた。
拘束されていない私は、
お父さんと、薫のロープを丁寧にほどいて、
そして、
直ぐにお父さんの胸に耳を当ててみた。
ドクン……
ドクン……
「うん、お父さん、生きてる……」
私を娘として愛せなかったはずのお父さんが、
こんな姿で、
それは違うのだと、伝えているみたいで、
「…………日本に、ちゃんと帰ってきたい」
確かに動き出した船の揺れを感じながら
後悔ばかりが押し寄せてくる。
「大丈夫だ。俺も何も考えずにここに来たわけじゃない」
また、
涙が止まらなくなった私を
薫が、
優しく抱き締めてきた。
最初のコメントを投稿しよう!