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世界人口の4分の1が中国系だと言われ、
小さな香港に700万人という人々が暮らすのに、高層ビルが立ち並ぶのは必然的な事だった。
その中国社会に、
″ 黒世界 ″ という、ヤクザのような組織がある。
「香港にはビル丸々が売春宿っていうのもあるんだよ」
だけど、日本の暴力団とは比にならない程、その結束力は高く、
国家機関が暗黙の了解でその悪事をのさばらしていると、
丸は興行の社長が、
移動する車の中で、放心状態の瞳に話しかけていた。
「何で、パパも速鷹も海で始末しなかったんだ?」
後部座席の私と、
HISEIDOの幹部の男の方を振り返りながら、やや不機嫌な様子を見せる。
どうやら船酔いが酷かったらしい。
後から付いてくる車に、お父さんと薫と、大塚医師達が乗っている 。
『ホントに警察は動いてくれているのだろうか?』
到着した時
静かな海を見て、とても不安になった。
別のコンテナには中国では大罪の薬物も大量に積み込まれていたらしく、
「女の子と一緒に売れたら今回の渡航はボロ儲けだ」
捕まれば確実に実刑になる証拠をトランク一杯にしてしまっていた。
「……大塚医師は、何でこんな事に手を貸すんだろう?」
芸能界や
それに伴うスポンサーのヤクザとの繋がりは何となくわかるけど、
「お、やっと口開いたと思ったら、どうでもいい事聞いてくるね!肝の座った女の子だ!」
日本で人気の美容整形クリニックとして大成してるのに、
人身売買に関与する理由がわからない。
「美容整形って、保険効かないじゃない?
普通 前受けで施工するんだけど、何百万もかかる場合はローン組ませるわけよ!それでも支払いが滞ったら、そのローン会社と組んで、こっちにお願いしてくるの!」
「…………知らなかった」
あんなに高技術でクリーンなイメージの病院なのに……。
「あと、あの男は本当に鬼畜だからね、売られていく女の子を見るのが楽しいんだって!」
薫が事前に取った行動を知らない瞳は、
希望を失った顔をしていて、
サイドミラーに映るその姿は、
まるで人形のようだった。
「ついたぞ!あのビルの地下で交渉がある」
きらびやかなネオンが
まだ、闇を知らなかった頃の東京の夜を思い出させる…
再び、
あの夜を過ごせる日は
やってくるんだろうか?
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