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「本当に来たんだ?」
私をお人好し呼ばわりしたのは、
勿論、沖田くん。
「………愛理は?」
暗闇の中で、慣れてきた視界に飛び込んできたのは、
クライミング部員の男の子のそばで、おとなしく座っている愛理だった。
「!」
お酒の匂いがして、
飲まされて酔っている状態だとわかる。
「ここ、喫茶店でしょ?何でお酒があるのよ?」
近寄ろうとした私に、
沖田君が降り下ろした右腕で通路を阻む。
「ここは、あの部員の親がやってる店だから気にしないで、ゆっくりしていきなよ」
「ゆっくりなんかするわけ無いじゃない、愛理に飲ませたの?」
「うるさかったからね、″美穂の邪魔するな″って」
本当にそうだ、
なんで、邪魔するの?
「………愛理を返して」
薫を孤独に陥れて、
私の成功の道を阻むことで、
そこに沖田くんにどんな好転が待っているというの?
「あんな泥酔した子、一人で帰らせるの?
終わるまで、ここで寝かせて待たせてあげたら?」
「………終わるって、なにを?」
分かりたくないのに、
沖田くん、
ううん、
クライミング部の子達の目的がわかってしまって、
香港であんな思いをしたのに、
それでも、
足が震えてきてしまっていた。
「………やっぱり、モデルだけあって、足キレイだね」
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