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スパイクの底で足を蹴られて、痛みで
思わずしゃがみこむ。
蹴られた場所はもう赤くなっていた。
「………………」
素足で来たのが仇になった。
「沖田お前、何でスパイクなんか持ってるんだよ?」
「中学の時まではサッカー部だったから」
近寄る声に反応して、
離してしまった瓶をもう一度掴もうと、手を伸ばすも………
ガシャン!!と、
それはサッカーポールのように蹴られて、また粉々になっていた。
「………………………」
「あの愛理って子が人を呼ぶのは時間の問題だね」
「おい、だから言ったろ?あの子外に出すなって!警察行かれたらどうすんだよ?」
「俺らは、なんもしてない。ただ、女の子が飲酒していただけ」
「はぁ?!」
「俺らの飲酒は大したことじゃないけど、モデルさんは大変なんじゃない?大事なステージ前に飲酒って、もうそれだけで仕事こなくなるよ」
そう、
沖田くんは、
私に性的な欲求はない。
ただ、
道を阻みたいだけ____
「烏山さん、イケる口?」
沖田くんは、左手で私の頭を押さえて、
右手でカウンターに置いてあったビール瓶を器用に開けると、
強引に押し込もうとする。
「時間がないんだ、ほら、早く」
………………私は多分、お酒は強い。
でも、
絶対に飲むわけにはいかない。
歯をくいしばって、飲酒を拒んだ。
「往生際悪いね、ヤラれルよりマシだろうに」
立ち上がった沖田くんは、
怖いほどの冷めた瞳で、私を見つめて、
「ちょっと??!」
上からビールを私にザバザバとかけだした。
「おいっ!沖田!店汚すなよ!?明日父ちゃんに怒られるだろっ??」
髪から絶え間なく落ちてくるビールの泡と滴………
白いシャツが、
一気に変色している。
「もう、選挙は諦めなって、高峰さんが投票権持った読者にワイロ送って票集めてるらしいし、
行ったところで、こんな汚いあんたには勝ち目はない」
沖田くんは、そんな私を見て嬉しそうにまた、飲酒をすすめた。
「ほら、飲めよ、どうせ一緒に謹慎食らうのは目に見えてるんだ、ばか騒ぎしようぜ」
「………イヤよ」
たとえ、
乾かなくても
「ステージには立つから」
ここで、諦めたら、
潤平や紅子に笑われる____
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