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「イヤよ、ステージには立つから」
立ち上がると、
髪の毛や肩からビールのべたつく雫がポタポタと床へと落ちていく。
どうしたら、分かってくれるんだろう?
「そんなお化けみたいな姿で本番出るつもり?イカれたと思われるよ?」
沖田君は、びしょ濡れの私を見て嘲笑っているかのような表情を見せるけど、
「穴を開けるよりマシよ」
先ほどより、
口調から鋭さがなくなっている。
____どうか、
わかって。
「ふぅん、それはそれで見ものだな、飲酒したモデルがどんだけ批判されるのか」
「これ、一本飲んだら、私をここから出して」
「やっと、飲む気になったんだ?」
「………………………」
私は、転がっていたビール瓶を持ち、それを開けて、
吹き出す泡から口にした。
私は、
あなたの、敵じゃない。
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