____ 別れ-2-2

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「早く行きなよ」 仲間の背中にスパイクを履いた足をのせて、 部員達の間から見える私の目を見つめている沖田くん。 「烏山さんの底力見るチャンスだから」 私に触れている男の肩を押しやった。 「何で俺たち、お前の気分で動かされなきゃなんないの? 部長ってだけで、お前そんなに偉いのかよ?」 起き上がる私の目の前で仲間割れだ。 「いつも、人の指示待ってからしか動けないのはお前達だろ? 烏山さんとやりたかったら、 俺が持ち込む話とは別に、本人にそう言ったらいいやん」 「………はぁ? お前本気でいってんの?」 部員達の目から、 私が完全に外れた事を確かめてから、 向きを変えて勢いよくドアの方に走り寄った。 「あっ!」「逃げるぞ!」 ベタベタする手でドアノブに手をかける。 「逃がしたら絶対チクるって!」 ドアを開けようとしたとたん、ふたりの部員にそれを阻まれた。 「沖田ボコってから、遊んでやるから逃げんじゃねーぞ」 ハッ!として、 後ろを振り返ると、 この店の息子が、 沖田君の胸ぐらを掴んで、床に押し倒していた。 椅子に頭を打ち付けたようで、 グッタリしていた。 「沖田くん!」 「成績良くて女にモててるからって、人気者になったつもりかよ?!」 その静かになった沖田くんを、 押し倒した部員が拳骨で殴っていた。 「ダメ!脳震盪起こしてるから!」 自分を軽く押さえてい手を振り切って、 沖田くんをまだ、殴ろうとする男の方へ駆け寄ると、 ゴツ!! と、 自分のみぞおちに、その拳を振り上げた男の肘が、 悪いタイミングで入り込んでしまった。 骨に、 異変が起きたのが、わかった______ ドサッ!と 膝をついて倒れこむ。 ………………沖田くん……… 気が変わって、逃がしてくれようとしたのに……… 「沖田くん ………………目を覚まして」 グッタリした沖田くんの上に重なるように、 猛烈な痛みから、意識が遠退きそうになっていた。 近寄る複数の足も見えて 濡れて乾かないシャツの袖を引っ張り、それを脱がそうとする力も感じたまま、 脱力したまま、 右耳に、 沖田くんの心臓の鼓動が入り込む……… ………………ねえ、 沖田くん、 あなたは、私の味方? それとも、 やっぱり敵だったの?
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