____ 別れ-2-2

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完全に意識を失った沖田くんの鼓動が、 耳元でその安定性を確認したとき コンコンコン! 「烏山さん、ここにいらっしゃいますか?!」 店のドアを叩く音と、 私を名字で呼ぶ大人の声が、 沖田くんと同じ所へイキそうだった私の意識を呼び戻した。 「だれだ?」「おい、鍵かけろよ!」 部員の一人が入り口に向かうと同時に、 ガチャ!!と ドアが勢いよく開かれる。 「烏山さん、 薫社長が渋谷の現地でお待ちですよ」 そこにいたのは 「………………眞田さん」 「誰だよ、お前?」「不法侵入すんなよ!」 薫の運転手兼SPの眞田さんだった。 ____助けに来てくれた。 「いくら暑いからと、室内で水遊びは高校生にしては、幼稚過ぎませんか?」 ビールでびしょ濡れの私を、 眞田さんはスーツの上着で覆いながら、 サッと自身の背後へと導いて、 奥で倒れている沖田くんに目をやった。 「警察は呼びません、早く救急車を呼んでください」 部員達は、 少し冷静になったのか、 動かなくなった沖田くんを見て動揺し始めている。 「ここには、 烏山美穂さんはいなかった、 あなた方だけで遊んでいた。 それでいいですか?」 「………………やべぇ」 震える手で、携帯から救急車を呼ぶ部員達の姿を見届けると、 眞田さんは、私を軽々と抱きかかえてしまう。 ビルを急出て、路駐していた車に乗り込み、急発進で走らせた。 「とりあえず、免停くらってでも、MIHOさんを本番までに連れてくるように言われました。」 みぞおちと顔の痛み、濡れたシャツのせいで寒くて仕方なかったけれど、 「………どうして、あの場所を?」 薫と眞田さんがくれたチャンスを無駄にしたくなくて、 かなりフラフラなのも知られたくなかった。 「薫社長が、最近頻繁に侵入してくるハッカーの存在を突き止めたんです」 ………………痛みからくる吐き気が、 頭を強く打った沖田くんの容態を、より一層心配なものだと、私に認識させる。 彼は、 もしかしたら 孤独なハッカーだったのではないかと、 それに似た闇を、 既に経験した私の脳が、 小さな同情を生み出していた。
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