濡れた制服を乾かすのは

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「モデルの高峰真優が襲撃した【エルス】コレクションリハーサル現場からです。 被害にあったHISEIDOの速鷹氏は 火傷による炎症反応と、出血多量が重なって心臓機能が著しく低下しているもようで、このままの状態が続けば、脳に後遺症が残ると言われ………」 私と同じ救急病院に搬送された薫は、 火傷の範囲が広い上に、 更に、空き瓶で後頭部を殴り付けられた傷により、 かなりの重体だった。 「美穂は…………顔じゃなくてよかったけど………」 病院で、一緒にニュースを見ていた角野さんは、 火傷を負った私の背中を、 悔しそうに見つめている。 「来週の【エルス】のショーは、厳しいみたいだよ」 せっかく勝ち取った、 憧れのファッション雑誌のショーの出演権も、 一人の人間の私欲により、 あっさりと奪われてしまった私。 「………背中の火傷って、消えるのかな?」 以前、お父さんとの悲しい行為のあとに負ってしまった古い傷の上に、 更に重なってしまった硫酸によるケロイド。 「皮膚の再生術なら、日本でも受けられるよ。それに、 背中がパックリ見えたドレスばかりを着るわけじゃないしね」 角野さんは、 私をなだめるように、 ベッドの横に座っていたけれど、 「水着の仕事は、もうできないよね」 いくつか契約が決まっていた仕事が、できなくなる事で、色々頭を悩ませていたようだ。 「よりによって、同じ事務所のモデルだからね………」 逮捕された真優は、 ″MIHOを全身で守ろうとする速鷹の姿を見て.カッときた″ と、 憎しみの矛先を変えた理由を、そう警察で述べたらしい。 「MIHO 明日にはお母さんも来るから」
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